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3月28日(月)5日目、震災より17日目 [Ishinomaki]

明日はキリバスに戻る飛行機に乗らなければならない。
自分がここで活動できるのは午前中いっぱいまで。
パートナーに自分が担当した部分を引き継ぎ、運用フローを作った。
最後に一通りの作業を彼に一人で実施してもらう。全てちゃんと動いた。
あとはデータの精度を上げていけば、いろいろ活用していけるはず。

この日はよく晴れていて、別れ際に芝生の上に座り缶コーヒーを飲んだ。
最初はとりとめもない話をしていたが、
やがて彼は静かに語り始めた。

「その夜は絶望だった。これが現実とはとても思えなかった。
はやくこの悪い夢が過ぎ去ってほしいと思った」と。

彼には幼稚園に通う子供がいる。
地震の直後、彼はすぐに幼稚園に子供を迎えに向かった。
しかし、たどり着くことはできなかった。
道路が渋滞する中、津波が押し寄せてきたのだ。
彼はやむなく家に引き返したそうだ。
その心中察するに余り有る。
彼はどうにか生き延び、混乱のなか再びわが子を探しに幼稚園に向かった。
津波が運んだ海水は夜になっても引かない。
彼は腰まで冷たい海水につかり、どうにか幼稚園近くの避難所となっている小学校にたどり着いた。
そこで子供に会うことはできなかったが、幼稚園は2階に避難してみな無事との情報を得ることができた。
そして彼はそのままその避難所で夜を明かした。
その夜、彼は絶望を感じた。

彼の話はあまりにも壮絶で、僕は口を開くことができなかった。

翌日、家族は再開を果たすことができた。
家も浸水は免れた。
しかし一帯はまさに地獄。
食糧や物資が全く手に入らない状態が続いた。
そんなある日、彼の家の前にある男がやってきた。
その男は食料やオムツなどを配ってくれた。
彼は助けがきてくれたことが嬉しくて、ほっとして、泣いたそうだ。

その男の名は、てんつくマン。
そう、このブログでも登場したことがあるあの男である。
彼はてんつくマンの姿を見て、自分もなにかしなきゃと決意した。
そしてどうにか自分の生活が落ち着き始めたころ、てんつくマンが代表を務めるNPO"MAKE THE HEAVEN"に参加するため、石巻市災害ボランティアセンターにやってきた。

僕は彼が自分の得意分野で石巻の復興に力を発揮し、やりとげることができると確信している。
もちろん彼は被災者なわけで、まだまだ生活は大変なはずだ。
だから無理をしないで、自分のできる範囲で、休みながら活動して欲しい。
ここでの主役はNPOや僕らのようなボランティアでなく、石巻市民自身。
ここからどうやって新しい石巻を創っていくか。
彼のように若くて優秀な人たちにリードしていって欲しいと思う。

彼と出会うことができ、一緒に仕事をすることができて本当に嬉しかった。
彼らは必ず新しい石巻を創ることができる。
来年帰国したらその姿を見に行くよ。

2.JPG
石巻市支援NPO連絡会IT担当。石巻市災害ボランティアセンター前にて。

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